本来、出会った者全員を敵だと思わなければならない。
まして、表界の人間なのに紫月のことが見えた翔真など、一番怪しい人物のはずだった。
(だが、コヤツは…)
紫月にも具体的には説明できない。
だが、確かに、出会った瞬間に“敵ではない”と感じたのだ。
「…ん?なんだよ、ジロジロ見て」
「いや…なんでもない」
紫月から見た翔真は、“変な奴”。
…そして、信頼できる奴だ。
「おや、起きたのね。調子はどう?」
カーテンの隙間から、奏が覗く。
「あぁ、もう大丈夫だ。いつもすまぬ」
「いーえ。…よかったわね、元に戻れて」
“元に戻れて”。
奏はそう言ったが、紫月はそうは思えなかった。
確かに、翔真は許すと言ったが、
(私が自分を許せないのだからな…)


