「……すまぬ」
こんな奴、初めてだ。
(そういえば…)
出会った時から、こいつは変な奴だったのだ。
本来、表界の人間と話すことは、黒鷹衆では禁じられている(例外はあるが)。
というよりも、対人間結界を張っているため、普通の人間には黒鷹衆の姿は見えないため、話すことなどできないのだ。
しかし、翔真は結界が崩れてもいないのに、紫月の姿を見ることができた。
確かに、裏界の青華家のソウルであるため、“そういう素質”はあるのかもしれない。
だが、一番、紫月が不思議だったのは、
(…翔真を見た瞬間、敵ではないと感じたことだ)
上級貴族の者達は、幼い頃から“人を信じない”ということを意識にすりこまされる。
紫月ももちろん、一番初めに教わったのは“人、信じべからず”だ。


