「あの…翔真殿。ああ見えて頭は、優しい方なんです」
歩きながら話しだす時雨。
「翔真殿の力の開放時、頭は最後まで反対されておりました。…いくらお母様が関わっているとはいえ、翔真殿まで巻き込むことはない、と
」
「……。」
紫月の悩んでいる顔が頭に浮かぶ。
確かに、言うのをためらっていたのは何度かあった。
「力の開放をすれば、間違いなく戦わなくてはなりません。さすれば、命を落とす可能性だって出てきます。だから、最後まで頭なりに、考えていたのだと思います」
「そうか…」
「…着きました」
地下牢から約五分。
清潔感が漂う綺麗な屋敷。
「ここが、医務室のある屋敷です。私はここまでですが…」
「あぁ。あとは紫月の霊気を辿っていくから大丈夫だ。ありがとな、時雨さん」
「はい」


