僕等はまだ恋を知らない



「はぁ………全く、澪には叶わないなぁ」


「え?」


「大切な物を手離すなんて、そんな覚悟いらないよ」


深いため息をつきながら「やれやれ」と首を横に振った。


えっと………。


「バカ」


「さっ…………」



ふわりと甘い香りが近づいた。


ツヤのある長い黒髪が頬に触り、やけにくすぐったい。


腕におさまってしまうくらいの小さな体が、私をぎゅっと抱きしめて。


「っ………」


突然の行動に息が止まってしまうかと思った。