僕等はまだ恋を知らない



校庭で練習をしている生徒たちの声も、車の音も何も聞こえない。

焼きついたように離れない九条くんの声が頭に響いてる。


きっと、今までで1番優しい顔をしていたんだろうな。

沙耶にしか……好きな人にしか向けない優しさを込めて。



前もしっかり見ずにただ走っていると、何も気づかない。



「………ひゃっ!」


「………うぉっ!」



ドンッと何かにぶつかる音がした。


「危ない!」


そのまま地面に倒れるかと思ったら、その前にグイッと腕を引かれた。