僕等はまだ恋を知らない



今の声は誰?


好き?

誰が、何を?


落ち着き始めていた脳内がまた騒がしくなる。

正解を求めてぐるぐる頭を悩ませても、よくわからない。



そんな私に追い討ちをかけるかのように、九条くんが沙耶を抱き寄せる姿がはっきりと目に映った。


九条くん………?


色付いた世界が一瞬でモノクロに変わる。


ドアに触れていた感触も、呼吸をしていることも、全ての感覚がない。

何もない無の世界だ。