『私が、過去を忘れる事も、祐希を忘れる事も、絶対にありえません』
『……恋愛なんて、今しかできない』
『なら、私は。
今が通り過ぎるのを、待ちます。
私に、人を好きになる資格なんてない』
透さんの目を見てそう断言すると、透さんの目が悲しげに揺らぐ。
『……それを、祐希は……っ』
『望んでいないでしょうね。
祐希なら、新しい人を作って幸せになれ。
だなんて、言いそうですし』
ふ、と頭によぎった祐希の笑顔を思い出し、笑みを浮かべる。
『俺は、お前のしたいようにして欲しい。
玲彩。
感情を抑える事ほど、辛い事はない。
祐希に遠慮なんてするな。
玲彩に、人を好きになる資格はあるんだから』
そう言って笑う透さんを見て、奥から何かがこみ上げてくるのがわかる。
『……私、明日も早いので。
今日はこれで、失礼します』
スッと立ち上がり、早足に部屋に戻る。
いやでも、思い出す。