黒狼と猫の総長様

 


早く逃げ出したい。



そう思って屋上をみると、ふと、人影が見えた。



じっとその人影を見ていると、一瞬、目が合った気がして、慌てて目をそらす。



それは、女で。



俺の嫌いな人間で。




だけど、ケバくなくてどこか儚い感じの女。



目を一瞬だけ逸らした後、屋上を見ても誰もいなかった。




『……愛哉』



こっそり、翔に呼ばれる。




『んー??』




『……今の女、見たか??』





そう言いながら翔は目を屋上に向けた。




『……見たよーっ、きれい、だった』



きれい。


その言葉で表してもいいのかと迷うぐらい。




翔と、同じ人種。




『大丈夫そうか?』




何を聞いてるか、なんて。
聞き返さなくてもわかった。





『……あの女なら。多分』





彼女に賭けなくては。



ほかの女、なんて、絶対無理な気がするから。



翔は、早速ここにきた本題のものを見つけたようだった。




ー愛哉サイドendー