私の言葉に一瞬目を見開いた月夜は、何かを察したように頷き、私から視線を外して当主と向き合う。
『……父さん、俺は、玲彩様のところでやって行きたいです。
今まで、有難うございました』
ゆっくりと頭を下げた月夜に、当主が頭を上げるように言う。
『月夜、お前の家はここだからな。
いつでも、戻ってこい』
そう言った当主を、唇を噛み締めながら見た月夜が、何度も頷き返す。
『……月夜』
『玲彩様、ありがとうございます』
『私は何もしてないわよ?』
礼を言った月夜に、そう言って首を傾げて見せる。
『米田様。この度は色々とわがままを言ってしまい、申し訳ありませんでした』
改めて当主に向き合いそういうと、私に向かって優しい笑みを浮かべる当主。
『黒羽様のおかげで、2人の本心が聞けました。
家族というものは、何でも言える関係でないとけないと、あなたから教わりましたよ』
笑みを浮かべたままそう言った当主に、私は何かを思いついたように声を上げる。
思いついたように、じゃなくて、思いついたのだけれど。
『黒羽様?』
『米田様。
私は、あなたの生け花を見るのが好きなんです。
この前、はいけんさせていただきました。
今度、私に、花のいけ方を教えてくださいませんか?』
突然そう言った私に、先ほどの月夜と同じように一瞬目を見開いた当主は、やはり月夜のようにすぐに元の表情に戻り、私を見て頷く。
『それは勿論、快く受けさせていただきますよ』
『ありがとうございます。
では、米田様。
今夜は、ゆっくりと楽しんでいってください』
当主にお礼と共にそういい、前に向き直って笑みを浮かべる。
『私は、これで失礼します』
その言葉と一緒に当主に背を向け、1つ息を漏らす。



