『私の息子は、今日は別で来ていまして……。
ああ、丁度今来たようです』
そう言った当主に、本当ですか? と笑みを浮かべる。
……そりゃあ、来るのは当然。
そう仕向けたんだから。
『こちらが米田の次期当主で私の息子の米田壮一です』
壮一の背中を軽く押しながら、当主がにこやかにそう言う。
私はその言葉に返さず、壮一と見つめ合ったまま沈黙を続ける。
『黒羽様? どうかされましたか』
さすがかに疑問に思ったのか、そう聞いてきた当主に、その質問、待ってましたよ。と、心の中で思いながら、あわてて笑みを浮かべる。
『いえ、まさか壮一だとは思わなかったので』
あえて、呼び捨てにする。
これも、作戦のうちに入っているから。
『壮一と面識が?』
『はい。壮一とは、学校で仲良くさせて頂いていますから。
彼を含めた、夜猫の皆様に』
にっこりと笑みを浮かべた私を見て、少し驚いた表情を浮かべる当主に、壮一が声をかける。
『……父さん、俺は、まだ、玲彩さんや夜猫のみんなと過ごしたいんです』
壮一の言葉を、黙ったままなにも言わずに聞く当主。
『……私からも、お願いします。
壮一は、私達には、とても必要な人なんです。
だから、壮一を、夜猫にいさせて下さい』
そう言って、深々と頭を下げる。
これも作戦……と言いたいけど、これはアドリブだから、きっと壮一も驚いているはず。
『……玲彩さん?』
ほら、戸惑った声が上から聞こえる。
きっと、頭の中で必死に状況を理解しようとしている。



