幻聴レクイエム





「熱っ…」


「大丈夫ですか?英さん」


久遠と碧が話している間に、お茶を飲もうとするが、どうやら火傷をしたらしい。


「あ、はい。大丈夫です」


彼女は舌を出しながら二人を安心させようと苦笑いをする。


その行動に疑問を感じたのか、久遠は何かを考え始めた。


「碧さん」


「言いたいことぐらい、私にだってわかりますよ」


「では、お願いします」


英には気付かれないように、碧に何かを伝える。


そして、お盆を持ってまたあの部屋に入っていった。


碧がこの場から居なくなるのを確認すると、ゆっくり英の顔を見つめる。


無言で見つめてくる久遠に少しばかり戸惑いを感じるが、それも彼の発した言葉でかき消された。


「貴方は幸せになりたいですか?それとも不幸になりたいですか?」


先程までとは違う禍々しい雰囲気を漂わせ、鋭い目で彼女の心を射ぬく。


その言葉に英は目を見開き、心を大きく揺らがされた。