幻聴レクイエム





何秒も続く視線の絡み合いに見ていられなくなった女の子は、ゴホンと咳払いをする。


「久遠さん」


「分かっていますよ。では、碧さん。お客様にお茶を用意してください」


「今日のお茶は?」


「ダージリンでお願いします」


「分かりました」


久遠から碧と呼ばれた女の子は、先程出入りしていた部屋に再び入っていく。


碧が完全に見えなくなると、久遠は歩き出し女性の前にあるソファーに腰をかけた。


「ご用件を聞く前にまず、お名前を教えて頂けないでしょうか?」


「あ、はい。英千沙羅です。」


「千沙羅さんですか。いい名前ですね」


「えっと‥ありがとうございます」


英は名前を褒められたのか、それとも久遠に言われて嬉しかったのかは分からないが、頬を赤らめて俯いてしまう。


その様子に気付いた久遠は、フッと彼女に笑いかけた。