女性はドアを開く音に気付き、スッと立ち上がる。


そこに立っているであろう西條久遠という人物を見ようとするが、その容姿に目を奪われてしまった。


整った顔立ち、スラッとした体型、綺麗な銀髪、不思議な色をしたオッドアイ。


何処かの英国貴族を思い浮かばされるような感じだった。


「西條探偵事務所へようこそ。私が西條久遠です。私のことは久遠とお呼びください」


久遠は目に掛かっていた前髪を上げ、軽くお辞儀をする。


それにつられたのか、女性も深々とお辞儀をした。


「それにしても、このお暑い中わざわざお越しいただいて…。連絡さえしていただければ駅までお迎えに行きますのに」


「えっと‥その、急いで来たので‥連絡するのも忘れてて」


「…そうですか」


久遠は手を口に当ててクスッと笑う。


女性はその行動の意味が分からず、首を傾げる。


「あぁ、申し訳ない。まさかその様な可愛らしい理由だと思わなくて」


キザすぎる言葉を連発している為、暑さで可笑しくなったのではないかと、彼の後ろにいた女の子は思う。


だが、呆れ気味の女の子の心とは裏腹に女性は頬を赤らめ、久遠に熱い視線を送っていた。