私は、児童養護施設で育った。
親や兄姉はいるのか分からないけど、ここで一緒に暮らしているみんなが大好き。
けど一番大好きなのはゆう君。
私の3つ年上のお兄ちゃん。
「みずほね、大きくなったらゆう君のお嫁さんになるの」
幼い頃の私は、毎日のように言っていた。
ゆう君も毎回
「いいよ。みぃは、ぼくのお嫁さんにしてあげるね」
と、答えてくれた。
そんな優しいゆう君が大好きだった。
「ずっと一緒だよ。仲良しな子はずっと一緒なんだよ」
「うん。ずっと一緒」
その言葉に嬉しくなった。
けど、ゆう君の表情は少し悲しげで
「もし離れ離れになっても、いつか必ず迎えに行くからね」
「?。うん、約束」
意味は分からなかったけど、ゆう君との約束が嬉しくて。
ただそれだけだった。
数日が経ち、ゆう君が引き取られることになった。
「ゆう君の嘘つき。約束したのに。いっしょて、言ったのに」
私はゆう君が出て行ってしまう悲しみを、ゆう君にあてるしかなかった。
「ごめんね、みぃ。ずっと一緒じゃなくて」
「ゆう君のバーカ。嘘つき。大嫌い」
ゆう君のことは大好きだけど、口に出るのは悪口ばかり。
「ほんとにごめん。でも、またみぃに会いに来るから。絶対会いに来るから」
ゆう君の顔は今にも泣き出しそうな顔をしていて
「約束だからね。今度は、破ったら許さないから」
私も泣き出してしまう。
「約束。何年かかっても会いに来るから。だから、最後くらい笑って」
「うん」
涙でぐちゃぐちゃになった顔でニッコリと笑う。
「ふはっ、へんな顔。」
ゆう君も笑顔になる。
「またね。みぃ」
「バイバイ。ゆう君」
そして、私とゆう君は別れた。
あれからもう10年・・・
はじめの頃は手紙を書いたりしてたけど、長続きしなくて。
結局ゆう君は一度も訪ねてくれなかった。
