オレが惹かれる社長の言葉も、実際にそれを向けられている横内さんにはピンと来ないらしく、彼はさっさと店を辞めていった。
そんなものに付き合う気はないと言うかのように。
『自分の店なら、儲けは全部自分に入ってくるねんで。会社やと自由もきかんし、給料は定額で保証されとるから、やる気が起きへんねん』
辞める前、横内さんはそう言って、居酒屋の図面をオレに見せてくれた。
自身で始めるという新しい店の設計図。
『な、よさそうやろ? トシやったら新しい店で雇ったってもええで』
結構本気でそう誘われたっけ。
でも横内さんが語る夢にも、輝く目の色にも、
オレが惹かれるものは何もなかった。
横内店長が店を去る日のことを、今でもはっきりと覚えている。
わざわざ店に顔を出した社長が、横内さんと交わした会話。
店内の拭き掃除をしながら、オレはそれを聞いていたんだ。



