不安でたまらないのに、身体中が熱かった。


辞めていった二人の店長に対する対抗心なのか、オレは社長の言葉を、夢を、信じてみたくなっていた。


何もかも全部捨てて、あの人のもとで、ガラにもないことに、がむしゃらにブチ当たってみるのも悪くない。


そう思えてくる。




「フ――……」


そこでまたタメ息をついた。

というより深呼吸。




つーか、もう引っ込みがつかんやん。

社長は海外へ行ってしもたし……。




白いご飯に肉を載っけて、がっつりとほおばる。


「辛っ」


急に口いっぱいに味が蘇り、オレはコップの水をゴクゴクと飲み干した。




「何もかも全部捨てて……か」


新妻の顔が浮かんだ。


「それも……いいのかもしれん」



ポツンとつぶやいた独り言は、昼どきの食堂の喧騒に飲み込まれていった。