ほんの1時間ほど前、オレは社長に呼ばれて会議室に入った―-。




取引先と揉めている納期の件で呼び出されたのかと思いきや、部屋に入るなり、社長はオレに深々と頭を下げた。


「ボクの不徳の致すところや。すまん、桂木君、ボクに力を貸してくれへんか?」


社長はいきなりそう言うと、テーブルに両手をついたんだ。




「え?」


「キミも知ってるやろ? うちの会社が、お好み焼屋やってんの」


「はい」


「店長がまた辞めたんや」


「はぁ」


テーブルを挟み、社長と差しで腰を下ろした。




「あの店、キミがやってくれへんかな?」


やけにふんわりと、社長が言った。




「はっ?」


「あれはボクが趣味でやってると思っている人間が多いけど、ボクは本気やで。あの店はうちの大切な事業の一環として捉えとるよ」


「は……い」