「いい、沢井? 正式な辞令が出る前に断らなあかんよ。ここ辞めたら、ウチらもう行くとこないねんで。27歳やで、あんた」


「えらい27歳を強調しますやん」


もう再就職ができないなんてことはないだろうけど、男の人とちがって、条件は悪くなる一方なのかもしれない。


男女雇用機会均等法が聞いてあきれる。


ヘッドハンティングなんてされる身じゃないしな……。


笑おうとしたけれど、顔がこわばっていた。


見ると綾香さんなんて、目に涙すら浮かべている。




「あは、優し、綾香さん」


「アホ、あんた迂闊やから心配やもん」


そう言うと綾香さんは、わたしをギュッと抱き締めてくれた。




「辛くても……ちゃんと断るねんで。自分で自分を守らなあかんよ」


「はい」



わたしはその腕の中で、小さく頷いた。