「おはよう、トシくん」


オレが店入りすると、すぐにアズが飛んできた。


「おはよ」


ちょっと恥ずかしげに紅潮した顔を見ると、その恋がうまくいったことが一発でわかる。


「おめでと」

「え、まだ何も言ってないけど」

「プ。わかりやすいねん、自分」


昨夜思いつめた顔でオレたちと別れたときとは全然ちがう、晴れやかな笑顔。


「桂木さんとつきあうことになったん?」


オレがそう聞くと、アズはコクンとうなずいて
「へへへ」って笑った。


「まー、よかったんちゃう」

「うん! トシくんたちのおかげ。ありがとうね」


なんて、ちょこんとお辞儀をして、ホールの掃除に戻っていく。

うん……。

強がりじゃなく、本当によかったって思うよ、オレ。

アズにはいつもあーゆー顔でいてほしい。

今までで一番幸せそうな顔。


ユニフォームに着替えて厨房へ入ると、桂木さんがもう仕込みに取りかかっていた。


「おはようございます」

「おー、おはよう」


清掃の行き届いた床のタイルが白い灯りに冴え冴えと映える。

手を洗い、消毒液を二度プッシュして、大きなまな板に、デンとキャベツを載っけた。