「沢井さん?」


2本目の映画が終わって、寄り添うように座っている沢井さんに声をかけた。


「沢井さん、終わったよ」


案の定返事はない。

フ。やっぱ寝落ちしてる……。


次々に繰り広げられるスピーディかつスリリングな展開に、しっかり目を見開いて画面に見入っていたはずなのに。

大迫力の映像に「キャ」とか「わっ」とか、小さな声をあげながら……。


そんな横顔が可愛くて、チラチラと盗み見ていた。

それがさっきから、うんともすんとも言わなくなった。

ちょっと静かなシーンが続いたし……。


いや、寝入ってしまうのもムリはない。

深夜、営業を終えてここへ来て、もうすでに1本観たあとだから。

普段ならとっくに眠っている時間だ。


「沢井さん、襲っちゃいますよ」


それでももう一度声をかけてみると


「クー」


とタイミングよく、彼女が小さな寝息を立てた。

フフ。

可愛くなって笑ってしまう。


「風邪ひくよ?」


立ちあがり、リモコンでエアコンを調節し、タオルケットをふんわりかぶせた。

ス―スーと微かな寝息を立てている顔を、しばし見つめる。

いつもより幼く見える寝顔が愛しい。