「うん。正直自分でも驚くほど、冷静でいられました。なんか憑き物が落ちたみたいな気がする」
なんて言って、桂木さんは笑った。
「リカコのこともそうやけど、自分のバカさ加減が、冷静に見れるようになりました」
コトン、と桂木さんは、麦茶の入ったグラスをわたしの前に置く。
グラスの中で氷が、カランと音を立てた。
「自分がもっと早く、ああしてリカコを突き放してやるべきだった」
桂木さんは締めくくるようにそう言った。
「そう……なんだ」
バカだな、わたし。
どんな言葉を聞いたって、それで納得いくはずがないのに。
それが本心でも、
本心じゃなくても……。
だってわたし、知ってるもん。
胸の奥に沈めた彼の気持ちが、どんなに大きなものだったか。
どんなに真っすぐにリカコさんを愛していたのか……。
それを知っていてここへ来た。
それでもいいと思ったから。
それでも桂木さんのことが好きだから……。
リカコさんの身代りでもよかった。
一瞬でもそんな桂木さんの心を救えるのなら、喜んでこの身を差し出す。
そう決意を固めて、ここまで来たのに。
桂木さんは、そんなことを求める人じゃあないのにね。
悪酔いする桂木さんに、そんな想いを押しつけることは、リカコさんのやってることと変わらない。
自分さえよかったらそれでいいなんて、
きっと、あとで桂木さんを苦しめることになる。



