それから綾香さんは声をひそめて聞く。
「うちの会社がこの店始めて、何年になる?」
「えっと2年が経ちました。今が3年目」
「店長辞めたん、2回目やんな?」
「は……い」
創業当時勤めていた店長は、1年ちょっとで店を去っていった。
もちろんそのときは事前に退職の申し出があり、社長が了承して、という段取りは踏んだけど。
そして、そのときバイトしていた富樫さんが店長に昇格し、社員になったんだった。
「2年でふたりか……。ヤバいんちゃう? 労働条件キツ過ぎるとか」
「え」
そう……なのかな? 確かにタイムカードや売り上げの数字だけではわからないことがあるのかもしれないけれど。
「でも、だからって、こんな辞め方……」
「ブラックですね」
言いかけたわたしの言葉を遮るように、ミユちゃんが言い放った。
なぜか自分に、ブラック企業の烙印を押された気がして、口をつぐむ。
社長席では、社長がスマホを耳に当て、出ない相手をじっと、待っているようだった……。



