「アズの気持ちをしっかり伝えるだけで、いいきっかけになると思うで。ずっとこのまま片想いしてるつもりなん?」


とトシくんは言う。


う……む。

もはやキレイごとばっか言ってる場合じゃないのかもしれない……。


「今夜は桂木さんのそばにいてやって」


最後はトシくんにそう頼まれた。


「うん、わかった」


がんばってみる。
がんばってみよう。




「じゃー行ってくる」

「おっしゃ。行ってこい!」
「がんばれ~、アズちゃん!」


戸締りを済ませた店の前で、トシくんとうるるんに見送られ、歩き出す。


「あー、アズ!」


すぐに呼び止められ振り向くと、追ってきたトシくんにささやかれた。


「あのな、コンビニでコンドーム買って行き」

「ええっ?」

「せっかく勇気出したのに、それがなくて見送りってなったら悲しいやろ?」


そ、そりゃあ……。


「で、でもそーゆーもんなん?」

「ハハッ、桂木さんマジメやし、念のため、な」


なんてトシくんは笑った。


「いや、でも、そんなん買ったことないし、恥ずかしいねんけど」

「タイミング逃していいん? こんなチャンス、もうないで」


トシくんはそう脅迫してくる。