わかる?とトシくんは聞いた。
「きっかけ……」
唾を飲み込む。
「い~い? 今夜アズちゃんが、酔っぱらった店長を介抱し、そのまま一夜をともにする……」
うるるんがゆっくりと、わたしに言い聞かせる。
「今夜の店長は激しく落ち込んでいるうえに、お酒も飲んでるから、いつもより落としやすいはずやで」
「う、うん」
落とすってことは、つまり桂木さんと……
一線を越えるってことだ。
わ、わたしにそんなこと……できるん?
「まー、店長がぐでんぐでんに酔っぱらって眠り込んでしまったらムリやけど、その場合はとりあえず服を脱いでベッドに滑り込んでね」
なんてうるるんは言う。
「ふ、服を脱いで?」
「うん。かんじんなのは、朝店長が目覚めたとき、アズちゃんが同じベッドで眠ってるってことやから。何もなくても、店長が何かあったと思ったら、それでええねん」
そううるるんは言い切った。
「え……」
で、でもそれじゃあ、真面目で誠実な桂木さんをだますことになる。
絶句するわたしを見て、トシくんが笑った。
「まーとにかく行ってみ。ズタボロでひとり飲んでる桂木さん、心配やろ?」
それはまぁ、そーやけど……。



