トシくんはそー言ってくれたけど、桂木さんがわたしを女として見ているなんてことは、まずない。
ただ……気を遣わせてるのかな、とは思っている。
わたしの『好き』はもう桂木さんにはバレていて、なるべく思わせぶりな態度をとらないように気をつけてくれてるのかも。なんて。
カン違いして、期待させたらかわいそうとか、
そんな感じ……?
「沢井さん、そっちコテ余ってる?」
洗い場にいると、厨房の桂木さんに大きな声で聞かれた。
「あ、うん。ありまーす」
洗い終わったまま食洗器に置き去りになっていた調理用のコテを、桂木さんのところへと持っていく。
「ハイ」
あ、
手渡すときに、手が触れた。
てゆーか、柄と一緒に手を掴まれた。
「あっ、ゴメン」
桂木さんがパッと手を離す。
「えっ、いいえ」
わたしも思わず手を引っ込めたから、
カッラーンとコテが床に落ちた。
落ちたコテをサッと拾って、桂木さんは流しへ向かう。
ジャーと水道の水を流してそれを洗いだした桂木さんの背中を見ていると、なんだか悲しくなった。
こんなに近くにいるのに、
どーしたって近づけない気がしたから。



