「勝手やな、ヒョウ六。結局離婚するんなら、リカコさんが桂木さんと結婚する前に、さっさとしといてくれたらよかったのに」
桂木さんの代わりにそう言った。
「どうしてもどうしてもどうしても……忘れられへんかったんちゃう?」
ポツッとつぶやく桂木さんの言葉。
「これで忘れられるって思ってたのに、どうしてもどうしてもどうしても……な」
「あー……」
なんて返事にもならない声を吐きながら、オレはただただ切なかった。
だってそれ、自分の気持ちやん。
「今からでも遅ないわ、アズに癒してもらえば?」
努めて明るく言ってみる。
「トシ、お前、そんなん言うてええの?」
すると桂木さんはチラリとオレを見た。
「何が?」
「あの子のこと好きやろ?」
「えっ?」
「はは、自分で気づいてないん? 厨房からよく見てるよ、沢井さんのこと」
「い、いや、それはただの状況確認で……」
慌てて答えた顔が赤くなったかも。クソッ。
そんなオレを笑いながら、桂木さんは窓の外の景色に目を遣った。
「オレはもうええわ」
「え」
「恋とか……もういらん」
独り言のようにつぶやいた桂木さんの声が、途中で一瞬、震えた気がした。



