「桂木さんはなぁ……オレに言うたで」
そんなふたりに言葉を投げる。
「リカコさんは子供が欲しいやろうからって……。
だからあの人は離婚したんやで。桂木さんはそういう人やねん」
さっきの桂木さんの情けない姿を、すべてだと思ってほしくはなかった。
せめてこの人にだけは、桂木さんの男らしい優しさをわかっておいてほしかった。
キレイな心を知っておいてほしかった。
「じゃあトシさん、店長を頼みます。後のことはボクらで何とかしますんで」
なぜかオレまでタクシーに押し込まれながら、ユースケの声を聞いた。
タクシーの後部座席に体を沈めて、桂木さんはすでに眠っているようだった。
オレは運転手に自分のマンションへの道順を告げ、タメ息をつく。
その息が小さく震えた。
「くっそ……。アホやん」
出来れば桂木さんのあんな姿は見たくなかった。
あの人はオレにとって、今まで会ったことのない大人。
大きくて温かくて、でもスッゲー強い人。
それが別れた嫁さんにしがみついて泣くだなんて……。
『忘れられへん』なんて、情けないこと言うなよな……。アホ。



