「ゴメンね、慎ちゃん。わたしはもう、この人と……」
リカコさんの美しい顔が歪む。
「助けて、リカコ……。苦しいねん」
掠れる吐息が震えていた。
桂木さんが、泣いている……。
「ちょっ、あんた! 何とかせぇや」
オレはガバッと振り返り、横ちょに突っ立っているリカコさんの恋人を怒鳴りつけた。
ここでブチ切れていなかったら、何だか泣いてしまいそうで……。
「店長、もう行きましょ。ね、帰りましょ?」
桂木さんをなだめるユースケの声も、現に涙声になっていた。
「あんたの彼女やろっ? 早よ取り戻せや」
やつ当たりみたいに、オレはヒョウ六に吠える。
「で、出来ません。そんなこと、ボクには……」
なのにヒョウ六は怯えるように首を横に振り、へなへなと地面にへたり込んだ。
「は? 出来ません? 今さら何? あんたはそーゆーヒドイことを、ずうっとし続けてきたんやろ? 桂木さんは、それを全部受け止めて来たんやぞ」
「すみません、すみません……」
ヒョウ六はいきなり土下座をし、額をアスファルトに擦りつける。
「慎ちゃん、ゴメンなさい、ゴメンなさい」
桂木さんの腕の中で、リカコさんも泣きだした。
「大丈夫やから……。リカコは何も心配せんでええから。オレがちゃんとお前を幸せにするから。大切にするから」
「慎ちゃん、ゴメンなさい。許して。わたしはもう、この人と、」
「大丈夫やから。がんばるから、オレ」
「慎ちゃん……」



