酔っぱらって動けなかったはずの桂木さんが、今、目の前で、男を払いのける。
「「あっ」」
そうしていきなりリカコさんを、自分の腕の中に抱き締めていた。
「「えー……」」
オレも、みんなも、払いのけられた男も、呆然と二人を取り巻く。
「あ、すんません! 店長今ぐでんぐでんに酔っぱらってまして……」
まずはユースケが声をあげた。
「そうそう。ワケわかってないんです。さっ、帰ろっ、桂木さん」
オレもそう謝って近づき、桂木さんの肩に手をかけた。
リカコさんから長身のガタイを引っ剝がそうとするけれど、強く抱き締めていて、桂木さんの腕はなかなかほどけない。
「リカコ……」
華奢な体をすっぽりと包み込み、艶やかな髪に触れる唇から、吐息のような声が漏れた。
「ゴメン。ムリやった、オレ……」
桂木さんはそう言った。
「慎ちゃん?」
聞き返すリカコさん。
「平気やと思ってたのに……全然あかんねん」
「どうしたん、酔っ払ってるん? スゴイお酒くさいよ、慎ちゃん」
「好きや、リカコ……忘れられへん」
絞り出すような言葉に、思わずユースケと顔を見合わせた。



