「なぁ、トシ」
「はい」
「あんな、靴ないねん」
「へ? クツ?」
「うん。さっきから靴がなくて困ってんねん、オレ」
そう言いながら桂木さんはベンチにもたれ、靴下だけになっている足をブランブランとさせた。
「は? どこで脱いだんですか? てか、店のスリッパ履いとったやろ?」
「知らん」
「探したん?」
「だってもう歩かれへんもん。目の前がグルグルって回っとる」
「えー……」
結局オレがあちこち探し回って、桂木さんのスリッパを回収する。
なぜかトイレの個室前に、ちょこんと並んで置かれてあった。
で、そのスリッパを履かせ、ふらふらの桂木さんを席まで連れて帰る。
「わっ、大丈夫なんスか?」
「あかんあかん。店長めっさ重い」
迎えに飛んで来たユースケの手を借りながら、とりあえず個室の土間に桂木さんを座らせた。
「地味に弾けてますね、店長」
「うん」
「そろそろお開きですけど、帰れるんかな、店長」
「タクで送ってくわ。家の場所、言えんようなら、オレんちまで連れて帰るし」
心配顔のユースケにそう言ってみせた。



