流れ星スペシャル



店内は広くて、夜明け前のこんな時間でも席は結構埋まっていた。

オレらが座る反対側の奥にトイレがあり、少し広く取っているその対面の通路には、洒落たフォルムのベンチが置かれていた。


「店長」


てっきり便器に貼りついて吐いてるのかと思いきや、ぼんやりとそこに座る桂木さんを発見した。


「どーしました?」


なんとなく、オレも並んで腰を下ろす。


「なんか……不思議やなぁと思って」


桂木さんはポツンとつぶやいた。


「何が?」

「居酒屋なんか、これまで何度となく来てたのに……。流れ星に勤務して以来、行く先々で店の様子が、やたら気になるようになった」

「あー、わかります。それ」

「接客の仕方だとか、客の入り具合とか。何人で回してんのかな~とか、店長はどいつや?とか」

「うんうん」

「油断してたら釣られて『いらっしゃいませ~』とか大声で叫んでしまいそうや」

「あはは」


間違えて叫び出す桂木さんの姿は、容易に想像できて笑えた。