「あかんあかん。絶対やめて! うちの親、慎ちゃんのことメチャクチャ気に入ってるもん。
それが別れてヒョウ六みたいなんと再婚するって知ったら、お父さん激怒してヒョウ六のことブッ飛ばすって」
ヒョ、ヒョウ六?
彼氏の名前か?
「ヒョウ六は慎ちゃんみたいな男らしい好青年タイプじゃないから、うちの父にも何もきちんとしたことが言えずに、きっとオドオドしてるだけやねん。
それを見たお父さんは心底がっかりして、ふたりの仲を引き裂くに決まってる」
いやいや、だから、なんでそんな男がええねん?
「お父さん、慎ちゃんとこへ行って『もう一回やり直させてくれ』なんて、泣きつくかも知れへん」
「あー……」
「だからな、わたし、ヒョウ六との赤ちゃんをお腹に仕込んでから、親に発表しようと思ってるんよ。妊娠して抜き差しならない状態になってから、離婚したこと打ち明けるねん」
「は?」
と小さく漏らしたのは、横でそばを焼くユースケだった。
「そーゆー訳やから、慎ちゃんもうちの実家には秘密にしといてね」
うわ……。
「マジでデリカシーゼロですね」
焼きそばを炒める音に紛らせて、ユースケが言う。
「うん」
オレも5回ぐらいうなずいていた。



