「そーゆーシンプルなんがええわ。なんの曇りもなく、ただ真っ直ぐにがんばれるやろ?」
「確かに」
大きくうなずいたわたしを見て、トシくんがうれしそうに笑った。
「な」
突き抜けるように鮮やかな笑顔。
そういう顔を見ると、海堂さんがどうしてもこの子を手放したくなかった理由が、わかる気がした。
「でもな、そうなると、ハジメにはなんの恩返しもできへんねん」
トシくんがポツッとつぶやく。
「着せられるだけの恩は受けてるからな、オレ。せっかく拾って育ててくれたのに、ハジメにはなんのメリットもなかったんやって思うと、なんか……たまらんくなる」
それが、トシくんがいつまでもホストを辞めなかった理由だ。
「実家の旅館な、ハジメは今でもちょいちょい様子を見に行ってくれてるねん。ただでコンサルみたいなことしてくれて、知り合いの雑誌に売り込んでくれたり……」
「へぇ~」
「うちの親、オレがホストになったとき『勘当や』って激怒してたくせに、こっちの羽振りがよくなると急に泣きついてきて……。
ムカついてたら、ハジメにドツかれた。
『親孝行できるだけ幸せやと思え』ってな」
そうして大金をポンと貸してくれたんだ。
「そっか……」
「うん」
どんなに悪口を言ってたって、トシくんはやっぱり海堂さんのことが好きなんだと思う。
自分に寄せてくれた信頼も期待も裏切ってしまうことが、つらんだと思う。



