「でもな……。自分の考える最高のサービスが、お客さんを満足させられるとは限らんねん」
涼やかな横顔はすぐに曇って、トシくんは少し息をついた。
「お客さんの要望は、もっと別の次元のことやったりするから……。そんなんオレ、ムリやもん」
「どんな?」
「つきあいたいとか、店の外でも会いたいとか、自分だけを想ってほしいとか」
「あー……」
「中には本気で好きになってくれる子もいてな、他の客と張り合って、長年貯めた貯金を使い果たしたり、自分が破綻するまでカード切ったり……。
そんなことさせるために、オレはがんばってるんやって、何度も思い知らされた」
淡々と話すトーンが低くなる。
「お客さんを幸せにしようとやってることが、逆に不幸に陥れてるとしたら、もうオレ、がんばれんくなった……」
そこでトシくんは言葉を切った。
大きな筋を渡ると、街は少し若者色に染まる。
力の抜けた店先にカジュアルなファッションが並んでいる。
「その点、流れ星はええで」
フッと、トシくんの声が柔らかくなった。
「お客さんの要望と、自分がやらなあかん仕事がピッタリ一致してんねん。
おいしいものを食べて、気持ちよく過ごしてもらう。最高のサービスが出来たら、お客さんは必ず喜んでくれるもん」
「うん」
「その笑顔がうれしくて、こっちもまたがんばろーって思えてくる」
「うんうん」



