「あ」
信号が点滅していて、二人で小走りに横断歩道を渡った。
手をつないでいる、というか、さっきからずっと手首を掴まれたままで……。
自分の手がそんなことになっているなんて、トシくんはたぶん意識してない。
「でもまー、あいつにはいろんなこと教えてもらった」
歩道のないゴチャゴチャした道を歩きながら、トシくんは言った。
「ホストの心得とか、サービス業の何たるかとか……。一緒に暮らしてたから、常にそんな話聞かされて、おもしろかったな」
「へぇ~」
で、今のトシくんがあるワケだ。
「あいつな、オレを後継者にするって言うてくれた」
「後継者?」
「うん。ハジメは施設で育ったらしくて、天涯孤独の身やねんて。だから『オレが死んだら全部お前にやる』って言われた……。『一緒にこの店デカくするぞ』って」
ポツポツとトシくんが話す。
「うれしくてな……、オレ『どこにも負けへん究極のホストクラブを作ったる』って、あいつに豪語しとったわ。」
フッと、懐かしそうな笑みがこぼれた。
「日頃のストレスを忘れて、いっぱい笑って、いっぱい癒されて、とにかく明日からまたがんばろ!って思える店にしようと思って、」
「ふ~ん」
「結構がんばったんやで」
なんて涼やかに笑う。



