店の外に出ても、トシくんはわたしの手を引っぱって歩き続けた。
ずーっと押し黙ったまんま。
たぶん海堂さんのことを考えている……?
そっと仰ぎ見た横顔は、キュッと唇を噛んでいた。
「家出少年やったん?」
ぽつんと聞いてみた。
「は? あいつ何バラしてんねん」
途端にムッと口を尖らせる。
それでもそんな表情があるほうが、やっぱトシくんらしい。
「板前修業がイヤやったって?」
「それなー、あとでどんだけ後悔したか」
なんてトシくんは言った。
「修業が厳しいっつーから逃げたのに、ハジメんとこで下働きさせられるほうが、よっぽど過酷やったし」
「ふふ、確かに……」
「マジでトラウマやからな。掃除とか、ちょっとでも手ェ抜いたら、蹴ったり踏んだりされるねんから」
「ふ、踏んだり?」
「うん」
トシくんは立ち止まり、片足でガシガシと地面を踏みつけてみせる。
「今でもあーしてトイレ掃除させては、鏡に映ってるのをじっと見張ってんねんで。めっさ怖いし」
あっは。見てたの知ってたんや……。



