「でもね、ボクらはそんなん関係ないねん。金があるんなら来てくれたらええし、なくなったら来るなって話です。
極端な話、客が自己破産しようが自殺しようがそんなん自己責任でしょう? そんなことにいちいち傷ついとったらホストなんて勤まりませんよ」
海堂さんはさらっとそんなことを言い、煙草に火をつけた。
「19歳のときやったかな? トシヤ『お好み焼き屋でバイトすることにした』って言いに来ましてね」
あ、流れ星のオープンのときだ。
「あいつ……オレの前で土下座しよったよ。『辞めさせてくれ』って」
そう言って海堂さんは、わたしと目を合わせた。
「あほやねん、あいつ」
そしてそう言い捨てると、すぐに目を伏せ、あとは無言でただ煙草を燻らせていた。
「終わった」
トイレ掃除を終えて、やっとトシくんが戻ってくる。
「じゃー帰るわ」
席には着かずに海堂さんに別れを告げて、トシくんはわたしの手首をグッと掴んだ。
その手を引っ張って、もう出口へと歩き出す。
「ちょっ、ちょっと待ってよ」
まだ肝心の話ができていない。
いや、もういいのか?
そもそもわたしなんぞが口出しすることではなかったような……。
引っぱられるままに席を立ちながら、一応海堂さんにお辞儀だけはしてみせた。



