「行ったら丸坊主にせなあかんらしくて、それがイヤやったみたい」
「えー、そんな理由?」
「はは、ガキやったからね」
なんて笑いながら、海堂さんはわたしの知らないトシくんのことを語り続ける。
「トシヤにはお姉さんが二人いて、それぞれ旅館の本館と別館の女将にするために厳しく育てられたらしいんやけど、あいつだけ末っ子長男で、甘やかされてきたんでしょうね。あんな生意気でわがままに育ってしまって……」
とクックと笑う。
「家出はしたものの、誰にも相手にされんかったみたいで、とうとうあいつ、うちの店に転がり込んで来たんですわ。ホストになりたいから面接してくれって」
「えー」
「おぼこい顔してるくせに、ナメられてたまるかって、ボクのことグッと睨みつけて……。歳聞いたら18歳やって抜かすんですけど、どう見ても中学生でしてね」
そこで海堂さんは懐かしそうにフッと笑った。
「ホストクラブみたいなところで、客の席に着いて接待するんは18歳以上って、法律で決まっとるからね。トシヤもそれは知ってたみたいで、履歴書見たら自分の生まれ年にプラス3して書いとんねん。3歳ごまかそうと思ったんやろうけど」
あ、だったらマイナス3にしないといけないのに。
「『お前これやと今12歳ってことになるけどええんか?』って聞いたら『すみません、間違えました』って顔色ひとつ変えんと、サーッて線引いて書き直しよった」
「へぇ……」
「今もそうやけど、勝気そうな、でも涼やかでキレイな顔しとったな……。ちっこいのに度胸座っとるし、こいつは物になるって思いましたよ」



