……あっ!
ちょっ、ちょっと待って。
この人に『結構な額借りた』ってトシくんが言ってたのは、ごっ、5千万円ってこと?
『1本ではなくて、その半分』だという借金って、つまり……100万円の半分じゃなくて、い、1億円の半分ってことなん?
ガー……ン。
そ、そんなんムリやわ、返されへん。
「でもまぁ、お前あんときまだ18歳やったけど、結局一年で返してくれたよな、あの金」
と海堂さんはトシくんに言った。
「ええっ、ご、5千万円を、ですか?」
思わず聞き返す。
「うん。思えばあの頃が、ホストとしてのトシヤの短~い全盛期でしたわ。ほんまにあの頃のこいつは惚れ惚れするくらい輝いとったもん」
「へ、ぇ……」
タメ息が出た。
わたしが叩きつけようとしていた50万円って、何やったん? は、恥ずかし……。
人知れずヘコむ。
「いや梓さん、世の中何がウケるかわからんもんですわ。あんなボロ旅館でもちょっと小綺麗に手直ししたら、今結構人気が出てるんです」
海堂さんは上機嫌で話を続ける。
「へんぴなんが却ってウケて、なんか隠れ宿的な感じでね」
「あら、スゴイ。よかったね、トシくん」
「うん」
わたしの言葉にトシくんがうなずくと、海堂さんがすかさず口を挟んだ。
「『お蔭さまで』やろが」
「……うん、わかってる」
いちいち恩に着せられても、トシくんは反論しない。



