「あの、わたしは沢井梓といいます。トシくんとは職場が同じで……」
「あれ? 梓さんもお好み焼き屋の人?」
ホストらしく、即、下の名前を覚えて呼びつつ、男は意外そうに言った。
「OLさんかと思ってたわ」
「元OL。今は店に出向してんねん」
横からトシくんが説明すると、代表はなぜかニヤけ顔になった。
「やっぱりな。で、梓さんはトシヤの……恋人ですか?」
え。
「ち、ちがうわっ」
わたしが答えるより先に、トシくんが思いっきり否定した。
「トシヤ……。お前、何赤面してんねん、あほとちゃう?」
わざとゆったりといたぶるように言いながら、代表はさらにニヤニヤとトシくんを見る。
「ボクは海堂ハジメ。36歳独身です」
そしてあの黒マットな名刺を差し出し、男はそう挨拶をした。
「は? なに自己紹介してんねん。アズ、捨てろ捨てろ、そんな名刺」
横でトシくんが騒ぎ出す。
「見ました、この態度? こいつはね、ボクのために週1回働くんもイヤや、と抜かすんですわ。ずーっとずーっとずーっと世話してやったのに」
「お前のそーゆー恩着せがましいところが、マジしんどい」
「このクソガキが」
パコッと代表がトシくんの頭を叩くと、すかさず彼も男のスネに蹴りを入れる。
「イタッ、何すんじゃ、ボケ!」
え……。
なんか……思ってたんとちがう。



