「ええっ、アズ、お前何言うてんねん!?」
啖呵を切ったわたしを、トシくんがガバッと振り返る。
わたしは膝の上に置いたバッグの持ち手をギュッと握り締めた。
そう。この中に50万円入っている。
さっき下ろしてきたお金。
『全部返せ』と言った男の言葉は、おそらくただの腹いせだったんだと思う。
それでもまだゴネ続けるのなら、このお金を叩きつけて、こんな男とは縁を切る。
それぐらいの気合でこの場へ臨んだ。
「証文ねぇ……。そんなん要るんか?」
男はわたしにではなく、トシくんにそう聞いた。
「頂いたものをお返ししないと、辞めさせてもらえないそうですからっ」
イヤミったらしく、わたしが答えてやった。
「何を言いつけてんねん。ボケ」
代表はギロリと、トシくんを睨みつける。それから腕組みをして、フーと鼻で息を吐いた。
「お姉さん、お金じゃないんですよ」
ソファにもたれ、ゆったりとした口調で男は話す。
「返せ、とは言うたけれど、別に形のあるもんじゃないんスわ。いちいち紙に書かんでも、ボクはそれをトシヤの胸に、ひとつ、ひとつ、刻んできたつもりや」
『ひとつ、ひとつ』のところ、自分の胸を拳でドスドス叩き、ものすごく強調してくる。
「はぁ……」



