「こ、この子とは、契約書か何か交わしているんでしょうか?」
それでも負けずに男の目を真っ直ぐに見据える。
「別に」
「じゃあ、お借りしたお金は、ちゃんと返したことになっていますか?」
「金?」
「はい。50万円お借りしたと聞いています」
「へぇ~」
立て続けに発するわたしの質問に、代表が答えていく。
「貸したっけ?」
男は、しぶしぶわたしの隣に座ったトシくんに話を向けた。
「いただいたお給料から引かれて完済したと聞いています」
トシくんより先にわたしが答える。
「ふ~ん。だったらそうなんでしょう」
「じゃあ、それを証文に書いてください。『安西俊也への貸付金はありません』って」
なるべく落ち着いた声でそう言った。
一応ダークな契約書も借金もなさそうでホッとしたけれど、甘く見てはいけない。
後になって理不尽な要求を吹っ掛けられないようにしなくっちゃ……。
「イヒ」
すると男は、大きな肩をすくめて笑った。
「イヤだと言ったら?」
ニヤニヤしながら、無遠慮に見つめる瞳。
完全にからかわれている……。
「この場で50万円お返しします。ですから証文を書いてください!」
その態度に負けないように、わたしは言い放った。



