「ほ~う」
男は片手を腰に当て、ちょっと下を向いた。
もう片方の手で鼻の頭をポリッと掻く。
デカい手。デカい体。
桂木さんより背が高いかもしれない。
営業前だというのに、やっぱりバリッとスーツを着こなしたその男は、おそらくイケメンの部類に入る。
はっきりとした目鼻立ち。
モデル並みの体格。
目ヂカラがあり過ぎて、そんなイケメン具合に気づかせないところが、この人のヤバいところかも。声も怖いし……。
「まぁ立ち話も何やし、中で座って話しましょか、お姉さん」
取ってつけたように『お姉さん』と呼びかけ、男は店の扉のセキュリティ装置にカードキーを差し込んだ。
「いや、すぐ帰るしっ」
トシくんが慌てて阻止し、わたしの手を掴む。
「イヤなら、トシくんは帰っていいよ」
わたしはその手を振りほどいて、そう言った。
だって、ここまで来て敵前逃亡はない。何とか話をつけて帰らなきゃ。
「お前なぁ……っ」
トシくんがイラだった声をあげたけれど、わたしは開かれたドアの前へと進んだ。
「イヤなら、トシくんは帰っていいよ」
男がわたしの口調をマネて、トシくんを見下ろす。
「チッ」
「イヒヒ」
舌打ちしたトシくんをバカにするように、男が笑った。



