「えっと、わたし、あの映画が好き……かな」


今まで観た中で好きだったものを思い浮かべて言うと、彼は目をまぁるくした。


「うわ、ボクも好きです、それ」




会社では1年後輩の彼。


だから基本、彼はわたしに敬語を使う。


でも,、短大卒で入社したわたしよりも、1年後に四大を出て会社に入ってきた彼のほうが、実はひとつ年上で……。

だから敬語の中にときどきタメ語が混じったりするんだ。


逆にこっちも、ちょいちょい敬語になったりする。




それはその人とわたしとの関係性に似ていた。


彼の営業課の経理を私が担当していて、仕事上ちょっとだけ親しいような……。


かといってプライベートで交流するほど仲が良いというわけでもなく……。