「薬、塗りましょか?」
わたしはサロンのポケットに忍ばせていた軟膏薬を取り出した。
丸くて平べったい小さな缶に入っているやつ。
「おう。塗ったって」
腕組みを外しテーブルに投げ出されている桂木さんの腕を、トシくんが勝手に引っぱって裏返した。
逞しい腕。
「エグいな」
「うん……」
男らしく太い桂木さんの腕には、真新しい水ぶくれの他にも、火傷の痕がたくさんたくさん出来ていた。
きっとこの店で働き出してからできたもの。
ちょんちょんとその水ぶくれに軟膏を塗っていく。
「あのな……」
塗り終えた薬のふたを閉めたとき、やっと桂木さんが重たい口を開いた。
「オレ、強い店を作りたいねん」
「……強い店?」
「うん」
桂木さんは顔をあげて、わたしたちを見る。
「と言うと?」
「いつもお客さんがあふれていて、どんなに不景気でも、どんな大雨の日でも行列ができるような店」
そうきっぱりと、桂木さんは言った。



