わたしの隣にトシくんが座り、向かい側には桂木さんがひとりで腕を組んでいる。
「えーっと……」
呼び付けておきながら、桂木さんはなかなかしゃべらない。
言葉を選んでいるのかな?
トシくんもわたしもしばらくは神妙に向き合っていたけれど、だんだんとこの沈黙に耐えきれなくなってくる。
「どう? 通しで入ってみて」
ついにしびれを切らして、そう言い出したのはトシくんだった。
「うん、大変やったけど、意外と早かったかも」
隣を向いて、わたしたちは目を合わせる。
「忙しいと時間経つの早いやんな」
涼やかな目が、人懐っこく笑った。
「アズ、家はどこなん?」
「新町。トシくんは?」
「オレ阿波座。近いやん、帰り送ったるわ。オレもチャリやし」
「ほんまに? よかったぁ、実は遅なったから、ちょっと怖かってん」
黙りこくった桂木さんを無視して、話がはずむ。
「店長の家はどこ?」
桂木さんにではなく、トシくんはわたしにそう聞いた。
「吹田、かな」
リカコ先輩との新居に、一度だけお呼ばれしたことがある。
新築の広くてきれいなマンションの一室。
「吹田? 遠っ。だからいつも朝まで始発を待って掃除してるんか」
自分の話になっても、桂木さんは押し黙ったまま。



