「ある?」
「うん。いっぱいいっぱいにがんばり過ぎると、そーなる」
ウィーン……。
食洗機の中をジェット水流のお湯が噴射し、食器を洗う機械音が唸り出す。
「しょーもないことで心が折れて、めっちゃ悲しなるねん」
「へぇ~、トシくんでもそんなことあるんや?」
「は? 繊細やねんぞ、オレは」
わざとスネるように言った横顔を、ちらりと見あげた。
フフ。繊細なのはよくわかるよ。
「なぁトシくん。わたし要らんかったら教えてな」
そんなトシくんになら、そう頼める。
「いらんって?」
「お店が大変そうやから勝手に手伝いに来てるけど……。ほんまはわたしなんて、いらんのかもしれへんねん。桂木さん何にも言ってくれへんから」
「は? いらんワケないやろ」
トシくんは即否定してくれた。
「でもな、桂木さんてば、さっき油が跳んだときもトシくんのことはガバァッて抱き締めるように庇ったのに、わたしのことなんか眼中にないもん」
「いや、抱き締められてないから。別に」
照れくさいのか、トシくんはムスッとつぶやく。



