「えっ、だってトシくんは鉄板の真ん前やから庇うやん。しかもオレ、沢井さんがいるの気づいてなかったから」
背後で桂木さんが一生懸命弁明している。
「いや、ボクに言われても……」
ユースケくんは苦笑い、かな?
「あのなー、悪いけどその話、後にしてもらえます? 今忙しいねん、わからん?」
ブチ切れるトシくんの声が飛んだ。
「店長、ホール出てください」
それからトシくんはそう指令を出した。
ゴメンなさい、こんな忙しい時間に。
きっと皆どんなにか、あきれているはず。
それでも涙は止まらなくて、やっと落ち着いたのは、桶の食器を一巡洗い終えた頃だった。
「お疲れ様で~す」
11時にユースケくんがあがり、12時を過ぎる頃にはうるるんが帰って、店はトシくんと桂木さんとわたしだけになった。
戦線復帰してからは、わたしもいつもどおり笑顔で客席を回れている。
来客のピークはとっくに過ぎていて、わりとゆったりと仕事ができていた。
「6番さん、あがるよー」
「はーい」
何事もなかったように大きな声をかけあっているけれど、実はあれ以来桂木さんとは目も合わせていない。
もちろんわたしが避けてしまっているんだけれど、桂木さんのほうから話しかけてくることも、なかった……。



