「えっ、ど、どーしたん、沢井さん?」
桂木さんの言葉に、ブンブンと首を横に振る。
「別に、何でもないです」
なんで涙が出てくるのか、自分でもわからない。
「痛かった? どこ? 見せてみ」
そう言ってわたしの腕をつかんだ桂木さんの手を、思わず振り払った。
「え、」
固まる桂木さんを置いてきぼりにして、わたしはそのまま洗い場へと入る。
ホールででひとり奮闘しているうるるんには申し訳ないけれど、こんな状態でお客様の前には立てないし……。
山盛りに溜まった食器を手に取り、お湯で流していると、洗い桶にポタポタと涙が落ちて止まらなかった。
「ト、トシくん、どーしよ」
「知らんわ、オレ」
背後では戸惑う桂木さんが、トシくんに冷たくあしらわれている。
「沢井さん、なんで泣いたん?」
なんて桂木さん、今度はユースケくんに聞いている。
「それはあれでしょ? 油が跳ねて、店長は身を挺してトシさんのことを庇ったのに、アズちゃんのことは放ったらかしやったから、ちゃいます?」
イタタ……。
ユースケくんに分析された自分の気持ちを、否定できなかった。
幼稚で、情けなくて、みっともない……。



