「ごめん、大丈夫か?」
体勢を戻しながら、腕の中のトシくんに低く聞く桂木さん。
「あっぶな……。水気切らな跳ねるの常識ですやん」
若干照れくさそうに、トシくんは桂木さんの腕の中から抜け出した。
「火傷した?」
「何ともないです、おかげさんで」
ぶっきらぼうにそう言うと、トシくんはもうエビ玉を焼き始めた。
…………。
イタ……。
プチッと一粒、油が跳ねたみたいで、腕の1点がチリチリと痛い。
「熱っ……」
なんかすごーい低い声がした。
あー、これ、わたしの声……か。
心の中でだけつぶやいたつもりだったのに、結構なボリュームで呻いてしまったらしい。
トシくんもユースケくんも、それから桂木さんまでもがこっちを向いた。
「ゴメン、沢井さん。油跳んだん?」
「跳んだ……」
あわてて尋ねる桂木さんに、低い声のままそう答えた。
「火傷した?」
「した」
ムスッとそう答えるのが精いっぱいだったのは、なぜかわたしの両目から、涙がドッと溢れだしたから……!



